■ビタミンEの限度を超えた摂取は骨粗鬆症を招く可能性あり ― 2012年03月16日
ビタミンEの限度を超えた摂取は骨粗鬆症を招く可能性あり -慶応大らが解明
慶大医学部腎臓・内分泌・代謝内科の竹田秀医学部特任准教授、伊藤裕教授らと、東京医科歯科大学、東京大学、大阪医科大学による共同研究グループが、米科学誌「Nature Medicine」オンライン版に米国東部時間3月4日に発表したところに依れば、ビタミンEの骨代謝における役割を解明し、適量の摂取は問題ないが、限度を超えた摂取は逆に骨粗鬆症を招く危険性があるという。
骨では、骨を作る「骨芽細胞」と骨を壊す「破骨細胞」(骨を壊すというより骨の吸収を行う細胞)が常に働き、骨の新陳代謝が行なわれていて、この骨芽細胞と破骨細胞の新陳代謝(骨代謝)のバランスが崩れると骨粗鬆症が発生する。
ビタミンは、骨強度と深く関わりがあり、中でもビタミンD は骨粗鬆症の治療に広く使用されている。ビタミンE はアンチエイジング効果があると考えられているが、ビタミンEの骨への影響についてはよく分かっていなかった。
共同研究グループは、血中のビタミンE濃度が極めて低い、ビタミンE欠乏モデルマウスの骨の解析を行った。このモデルマウスは主要なビタミンEである「αトコフェロール」の輸送タンパク「αトコフェロールトランスファープロテイン(αTTP)」を欠損したマウスである。
このマウスは、破骨細胞の大きさが小さく、うまく骨を壊すこと(骨の吸収)ができておらず全身の骨の量が増加していた。続いて、破骨細胞を培養してビタミンEを添加すると、破骨細胞が巨大化して骨を吸収する能力が亢進した。これはビタミンEが破骨細胞の巨大化に必要なタンパク質の産生を誘導することを証明したものである。
更に、正常マウスと正常ラットにヒトがサプリメントとして服用しているビタミンEに相応する量のビタミンEを添加した餌を8週間投与すると、破骨細胞による骨の吸収が亢進し、骨量が減少し、骨粗鬆症を発症した。
これらの結果より、ビタミンE は破骨細胞を巨大化し骨の吸収を促進すること、ビタミンEの摂取量が多いと骨粗鬆症を引き起こす可能性があることを明らかにしたのであり、ビタミンEを含む薬剤やサプリメントの過剰摂取が骨粗鬆症を引き起こす危険性があることを証明したものという。
国内で販売されているビタミンEを含んだサプリメントを、適量を守って飲んでいる分には、安全である。(適量を摂取していれば数100mg/日であり、厚生労働省が定めた上限800~900mg/日を超えることはない)。但し通常の3倍も4倍も摂取したり、米国産の多量にビタミンEを含むサプリメントを過剰摂取して1000mg/日を超えるような状況を続けていると、特に影響を受けやすい高齢の女性では、骨粗鬆症が進んでしまう危険性もあるという。
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