■あなたの肥満、腸内細菌の不足が原因かも ― 2015年03月01日
あなたの肥満、腸内細菌の不足が原因かも
http://jp.wsj.com/news/articles/SB12711975506514794531604580287951049681076
The Wallstreet Journal > ライフ 2014/11/20
The Wallstreet Journal > ライフ 2014/11/20
■肥満は遺伝するのだとすると、その原因は腸内細菌にあるかもしれない。コーネル大学の研究者達が、専門誌セルに2014年11月に発表した所に依れば、体形をスリムに保つのに役立つとみられるクリステンセネラセエ(Christensenellaceae)と呼ばれる細菌種を特定したという。 この細菌種を移植したマウスは、同じ餌を食べても移植を受けていないマウスほど体重が増加しなかったという。
■腸内細菌が動物の体重に影響を及ぼすことは、数十年前から判っていた。
肥満率上昇の一因は、抗生物質の使用が増えたため、人間が食べ物を効率よくエネルギーに変換する一助になりうる細菌が減っていることかもしれない、との見方が広がっている。
赤ん坊は細菌を持たずに生まれてくるが、最終的には約100兆個の微生物の宿主となる。その数は人間の細胞の約10倍だ。細菌は肌、口、鼻、耳、生殖器、特に消化管を隅々まで覆っていて、食べ物を消化したり、侵入してきた細菌を撃退するばかりか、免疫システム、新陳代謝、そして気分までも整えるのに役立つビタミンや化学物質の生成もする。
キングス・カレッジ・ロンドンの遺伝疫学者でこの研究にも貢献したティム・スペクター氏に依れば、「人を死に至らしめるような悪者の細菌を調べてきたが、人間を助けたり、体形をスリムに維持したりする数千種類の好ましい細菌には注目してこなかった。」
そうした細菌群は人間と共に進化し、わずかな乱れでさえ、肥満、糖尿病、高血圧、異常なコレステロール値、腹部脂肪、がん、動脈内にプラークが蓄積するアテローム性動脈硬化など、さまざまな健康問題と関連付けられてきている。
今や排泄物、唾液、その他のサンプルで、遺伝子解析を行うことでより簡単に細菌を特定したり、その数量を見極められるようになって、この分野の研究は盛んになっている。集積されたデータは人間の細菌コミュニティーがいかに複雑で異なっているかを教えてくれる情報の宝庫になり得る。
◎ニューヨーク大学の微生物学者マーティン・ブレイザー博士に依れば、酪農家たちは1950年代から家畜や家禽を太らせるために抗生物質を与えてきたという。博士の研究では、少量のペニシリンを若いマウスに4週間投与するだけで――腸内細菌の状態が正常に見える場合でも――成長してから肥満になるということが明らかになった。
◎2013年、ワシントン大学の研究者たちが、サイエンス誌に発表した研究に依れば、
また、 ブレイザー博士は新著の中で、抗生物質、抗菌石けん、その他の抗菌製品の激増により、幾つかの耐性菌を生み出しているばかりか、人間と共に進化してきた細菌を激減させていると述べている。
ブレイザー博士は、食欲の調整を手助けする種類の細菌が人間の消化管から消えつつあることを特に懸念している。 ピロリ菌は消化性潰瘍を引き起こすことで悪名高いが、研究では食欲を増進させるホルモンのグレリンの調整の手助けもすることがわかった。グレリンの働きを抑えるピロリ菌がないと、人間は体が発する「食べるのを止めろ」という合図を見逃してしまうかもしれない。それなのに、測定可能な量のピロリ菌を体内に持っている米国人の子供の割合は約6%でしかいない。博士によると、今日の米国人が体内に保有している細菌の種類は、抗生物質にさらされる機会が少なかったアマゾンの原住民のそれの2/3ほどでしかない。マウスでは、エサや運動の量にかかわらず、腸内細菌を変えるだけで体重が変えられるということが他の研究でわかっている。 片方が痩せていてもう片方が太っている4組の一卵性双生児から腸内細菌を採取し、それを無菌状態で育ったマウスに移植した。同じ低脂肪のエサを与えていたにも関わらず、肥満のドナーから腸内細菌を移植されたマウスは数週間以内に肥満になり、痩せているドナーから腸内細菌を移植されたマウスは痩せたままだったという。
◎体重増加を調整する細菌に関して、遺伝が一定の役割を果たしていることを示したコーネル大学の新しい研究は、416組の双子を含む23歳~86歳の約1000人の排泄物を分析した。クリステンセネラセエの水準は、普通の兄弟同士よりも双子同士の方が似通っていた。これは遺伝の影響が強いということを示している。クリステンセネラセエは双子の太っている方よりも痩せている方により多かった。
◎細菌が健康に果たす役割に関する、米国立衛生研究所(NIH)の研究
この細菌を無菌状態で育ったマウスに移植した21日後には、そのマウスの体重は移植を受けていないマウスの体重よりも大幅に少なかった。 クリステンセネラセエが人間の新陳代謝にどう影響し、どのように遺伝するのかは現時点では判っていない。
コーネル大学の研究者たちが次に計画しているのは、マウスに便移植ではなく経口でクリステンセネラセエを投与し、その影響の持続期間を調べる研究で、人間用プロバイオティクス(体にいい細菌)製品への応用に道が開ける可能性もある。出産が近づいている妊婦の細菌群にどのような変化が起きるのかを調べるものや、離婚、失職、インフルエンザの感染といったストレスが糖尿病予備軍の人の腸内細菌をどう変えるのか、本格的な2型糖尿病が引き起こされる可能性はあるのかを追跡調査するものなどがある。
■体内の細菌について知っておくべきこと ~ 最も一般的な細菌についての発見
クラウドソーシングを通じて人間の細菌のことをさらに学びたいとする、コロラド大学を拠点とするプロジェクトには、約7000人が食事、健康、生活習慣に関する情報と共に大便や唾液のサンプルを送っている。99ドル以上を支払うと、サンプルのドナーは自分の体内細菌の統計的側面を知ることができる。一方、研究者たちは調査用のデータを大量に入手できる。
細菌群が年齢や抗生物質だけではなく、食べる野菜の種類数、酒の摂取量、運動量、平均睡眠時間などからも影響も受けることがわかってきているのだという。
- ・ビフィズス菌は母乳で体内に取り込まれ、腫瘍を防ぐかもしれない。
- ・クリステンセネラセエは肥満を防ぎ、遺伝する。
- ・ピロリ菌は消化性潰瘍の原因になるが、食欲の調整に役立つ。
- ・大腸菌はビタミンKを作るが、大病を引き起こし得る。
- ・クロストリジウム・ディフィシレは腸炎や下痢を引き起こし、人を死に至らしめることもある。
- ・黄色ブドウ球菌は腫れ物の原因になり、薬物耐性を持つ。
- ・緑膿菌は耳や目の感染症を引き起こし、病院内で広がることもある。
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