■カテキンの1種と男性性機能障害治療薬でがん細胞のみを強力に殺傷 - 九大 ― 2013年03月02日
カテキンの1種と男性性機能障害治療薬でがん細胞のみを強力に殺傷 - 九大
九大大学院 農学研究院の立花宏文主幹教授らの研究グループが、米国東部時間1月25日付けで米国科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」オンライン版に発表したところに依れば、緑茶に多く含まれるカテキン(緑茶ポリフェノール)の1種「エピガロカテキンガレート(EGCG)」が、血管を弛緩させる経路として知られている一酸化窒素/「cGMP」経路を活性化することで、正常な細胞は傷つけずにガン細胞を特異的に殺傷する仕組みを発見したという。
更に、一酸化窒素/cGMP経路を阻害する酵素である「ホスホジエステラーゼ5(PDE5)」が腫瘍において高発現しており、男性性機能障害治療薬として用いられているPDE5阻害剤を併用することで、EGCGの抗がん作用を飛躍的に増強できることも併せて発表した。
緑茶や緑茶特有の成分であるEGCGの摂取が、前立腺ガンや胃ガンに対して抗ガン作用があるとの研究報告がある一方、否定する報告もあり、緑茶の抗ガン作用には不明な点が多く残されていた。
これまでに「67kDa laminin receptor(67LR)」という細胞膜表面にあるタンパク質にEGCGが結合することでガン細胞を選択的に殺傷することを明らかにされていたが、EGCGのガン細胞を殺傷するメカニズムは不明だった。
今回の研究は、EGCGは67LRを介して一酸化窒素合成酵素を活性化し、勃起や血管を弛緩させる経路として知られている一酸化窒素/cGMP経路を介して「プロテインキナーゼCδ」並びに「酸性スフィンゴミエリナーゼ」という酵素を活性化することで、ガン細胞にアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導することを発見したもの。
緑茶を数杯飲んだ程度で吸収される量のEGCGでは十分な抗ガン作用を発揮できない。そこで、EGCGの活性を阻害している因子がガン細胞にあるかを探った結果、PDE5が様々なガン細胞(多発性骨髄腫・膵臓ガン・前立腺ガン・乳ガン・胃ガン)で正常細胞に比べて高発現しており、EGCGの抗ガン作用を阻害していることを突き止めた。
更に、ED治療薬として用いられているPDE5阻害剤でその働きを抑えたところ、低容量におけるEGCGのガン細胞致死活性を飛躍的に増強できることが判明した。また、今回発見したEGCGのがん細胞致死機構は、既存の抗ガン剤とは全く異なる仕組みであり、既存の治療薬に効果が無い或いは既存の治療薬に抵抗性を持ったガンに対する治療薬の開発に結びつくと期待されるという。
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