■危ない食後の中性脂肪上昇 ― 2012年03月22日
危ない食後の中性脂肪上昇
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201203/523805.html
Nikkei Medical Online リポート・特集 2012/03/12
Nikkei Medical Online リポート・特集 2012/03/12
食事内容により大きく変動する血清中性脂肪(TG)値。総コレステロール(TC)値が正常でも、食後にTG値が上昇する人は動脈硬化性疾患のリスクが高い。
平光ハートクリニック(名古屋市南区)院長の平光伸也氏は、身近な高脂肪食であるファストフード(ハンバーガー、アップルパイ、清涼飲料水)を食べた後に、TG値がどのように変動するか、健常者を対象に血清中のTG値の変動を調査した。
その結果、小太りでメタボリックシンドロームに近い被験者の多くで、血清が白く濁り、TG値高値が6時間経過後も持続することを確認した。
本来、TG値は食後に上昇し、血管壁に存在するリパーゼなどにより加水分解を受け、速やかに代謝される。この代謝が遅くなると、食後数時間たっても血中の TG値が上昇したままとなる。TG値の代謝を阻害する要因は、インスリン抵抗性などが関与することも分かってきている。
TC値低値でもリスク高まる現在の「脂質異常症診断基準」では、TG値150mg/dL以上が高 TG血症と定義されている。測定は全て、10~12時間以上の絶食後が基準とされており、リスク評価の指標として食後のTG値は使われていなかった。
まずは食事・運動療法を
但し、日本人男女11,068人(40~69歳)を対象とした前向き調査の結果、総コレステロール低値群(男性183mg/dL以下、女性195mg/dL以下)でも、非空腹時TG値が高い男性において、冠動脈疾患の発症リスクとなることが示されている。(Iso H. et al.Am J Epidemiol, 2001;153:490-9.一部改変)
このような、食後に高TG値を示す、若しくはそのピークが遅延する状態は「食後高脂血症」と呼ばれ、動脈硬化性疾患の新たなリスク群として注目を集めているが、その診断基準がない。
TG値は、食事内容や食後経過時間によって同一個人内でも大きく変動する。「食後高TG血症」を見つける為には、何らかの負荷試験が必要となるが、標準化された負荷試験はないが、「脂肪負荷試験」の検討は進められ、標準化のメドは立っているが、TG値のピークを測定するには、8時間ほど経過を観察する必要があり、実臨床への導入が難しい状況ということで、今春改訂される日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」にも、食後高脂血症の記載はほとんど無いという。では、実臨床の現場ではどうしたら良いのか。
日本人の血清TC値は、過去40年間上昇しており、2000 年の調査では平均200mg/dLを超え、ほぼ米国人と同程度となっている。特に顕著に増えているのがTG値で、壮年期男性での上昇が目立つ。このTG値の上昇は、体格指数(BMI)の増加と相関する。
阪大循環器内科病院教授の山下静也氏によれば、内臓脂肪が減れば、TG値も並行して低下する。絶食後の検査で基準値内でも、内臓脂肪が溜まった小太りの患者に対しては、カロリー制限や有酸素運動などで、体重を減らすのが望ましく、食事に含まれる脂肪が食後のTG値上昇に寄与するので、脂肪摂取量を減らすことが有効だ。
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