■テロメア長が短い人は癌罹患と癌死亡のリスクが高い ― 2010年08月06日
Nikkei Medical Online HOT NEWS 2010/07/30
JAMA誌2010年7月7日号からオーストリアInnsbruck医科大学のPeter Willeit氏らが、JAMA誌2010年7月7日号に発表した研究によれば、染色体の末端にあるテロメアの短縮は、染色体を不安定にし癌化のリスクを高める可能性があるというもので、テロメア長と癌罹患、癌死亡の間に有意な関係を見い出したという。
イタリアBruneckの住民の中から40~79歳の人々1000人を無作為に選び、5年ごとに調査した。95年の評価で癌ではなかった人のうち、05年までの癌の罹患と癌による死亡に関する情報が得られた787人を対象に行われた(対象となる癌は、メラノーマ以外の皮膚癌を除く全ての癌)。
ベースラインの白血球のテロメア長は、Cawthon氏らが開発した方法を用いて、定量的PCRにより測定した。テロメア長は、T/S(テロメアの繰返配列のコピー数/単一遺伝子のコピー数)比で表した。
全員のベースラインのテロメア長(T/S比)の平均は、1.48(1.43-1.54)。癌罹者群の平均は1.12(1.02-1.23)で、非罹患者の1.53(1.47-1.59)に比べ短かった。
ベースラインのテロメア長に基づいて登録者を3分し、短いグループ(264人)のテロメア長は 0.78(0.76-0.80)、中間グループ(258人)は1.30(1.28-1.32)、長いグループ(265人)では 2.36(2.27-2.45)となった。
短いグループの47人、中間グループの32人、長いグループの13人が癌に罹患していた。テロメア長が短いことと有意な関係を示す要因は、高齢、性別男性、糖尿病、身体活動が少ない、高感度CRP高値などが同定され、これらと、社会的な地位、喫煙歴、飲酒などで調整してCox回帰分析を行ったところ、ベースラインのテロメア長が短いことは、独立した癌罹患の危険因子であることが明らかになったという。
テロメア長が長いグループに比べると、テロメア長が短いグループの癌罹患リスクは3.11倍、中間グループでは2.15倍(1.12-4.14)だった。
癌死亡について、癌死亡は44人で、テロメア長が長いグループは2人、中間グループが14人、短いグループが28人だった。1000人-年当たりの死亡率は、全体では6.2(4.6-8.3)、長いグループは0.8、中間グループは6.0、短いグループでは、12.9となった。
原題:「Telomere Length and Risk of Incident Cancer and Cancer Mortality」
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