■免疫力向上、腸がカギに 検査や食生活指導広がる ― 2014年05月06日
免疫力向上、腸がカギに 検査や食生活指導広がる
免疫力を高めるためには、腸の働きが大きな要素を占めることが判ってきた。有害なウイルスを排除する免疫細胞の多くは腸内にあるとされ「免疫力の8割は腸内の状態で決まる」との指摘もある。医療機関もこうしたメカニズムに注目、腸内検査や食生活の改善指導などに力をいれているという。
■血中成分で分析
東京都中央区の健康院クリニックでは2012年春から「腸内環境検査」を始めた。疲れ易かったり、皮膚がかぶれやすかったりするなど、原因が分かりにくい症状を訴える人に、約30ccを採血して血液中の成分を調べ、腸内の状態を分析する検査を勧めている。
健康な人の腸内には細菌類がバランス良く住み着いているが、不規則な食生活やストレスなどの影響で腸内の細菌バランスが崩れてしま結果、特定の食物に免疫細胞が過剰に反応してアレルギーを起こし、疲れなどの症状で現れる。長期的には動脈硬化やリウマチなどを引き起こす恐れもある。
検査でアレルギーを引き起こす食物を特定し、摂取を控えるようアドバイスし、腸内の代謝を促すビタミンB群や乳酸菌などのサプリメントの服用も促す。検査とその後の指導を通じ、じんましん症状が改善した事例もある。 料金は、アレルギーの特定などで35,000円から。月に5人程度が検査を受ける。
小金井つるかめクリニック(東京都小金井市)では、2007年から実施している免疫力を測る健診の「免疫ドック」にて、採血で腸内の免疫細胞の数や増殖力を測定し、その人が持つ免疫力を評価する。免疫力は加齢に伴い低下することから、「免疫力年齢」を調べることも可能だという。
■乳酸菌を摂取
東京大の一戸猛志准教授(ウイルス学)のマウスを使った実験では、腸内細菌の数が多い方がインフルエンザに罹った時に症状が軽く済んだり、短期間で肺の中のウイルスが除かれたりすることが分かった。細菌から出るシグナルが血液を通じて肺に達し、インフルエンザウイルスへの抵抗力を生み出す発熱などを引き起すと考えられ、そのメカニズムは完全に解明されていないが、インフルエンザへの免疫を高めることと、腸内細菌の数を増やすことが密接に関わっていると推察される。
免疫力を高める細菌としてよく知られているのは乳酸菌、この乳酸菌は免疫をつかさどるリンパ球の約2割を占めるナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する役割を担っている。
伊万里有田共立病院(佐賀県有田町)などが2011年、小学生ら約1900人に乳酸菌入りのヨーグルトを摂取させ、インフルエンザへの感染を調査。同町の小学生の感染率は0.64%で、佐賀県全体の感染率(4.37%)を下回ったという。
順天堂大医学部の奥村康・特任教授(免疫学)に依れば、摂取した乳酸菌が腸管の内壁から体の中に取り込まれ、血中のNK細胞を刺激して活性化させる。NK細胞の活性化による免疫力の向上には「β―グルカン」とよばれる多糖を含む、シイタケなどのキノコ類も効果があるというが、ヨーグルトや乳酸菌飲料は過剰に摂取すると下痢を起こす可能性もあるので、適量を心がけたい。
■免疫力低下 加齢やストレスも要因 日ごろの対策必要
腸内環境は免疫力を決める重要な要素だが、加齢や生活習慣による部分も大きい。加齢の影響は避けられないが、日常生活の管理で気をつけるべき点は多い。
東京理科大の安部良教授(免疫学)が挙げる一例が、強いストレス。ストレスを感じると免疫の働きを抑制するホルモンを分泌する。タバコに含まれる化学物質はNK細胞などの働きを下げるので、喫煙も注意が必要。
空気が乾燥するとウイルスの侵入を防ぐ粘膜の中の細かい毛や粘液の働きを落としてしまうため、乾燥する冬場には加湿器を使用したりマスクを着用したりといった対策も有用だ。
一方、加齢に依り新たに作られる免疫細胞の量が減ったり、皮膚に含まれる水分量が減ったりして、細胞間の隙間から異物が侵入し易くなったりするので、加齢によって免疫力が一定程度低下することは仕方がないが、高齢になるにつれ、生活習慣には一層注意したい。
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