■糖尿病があると癌患者の死亡リスクが高まる ― 2009年01月31日
Nikkei Medical Online HOT NEWS 2009/01/16
全死因死亡は糖尿病のない癌患者の1.4倍米国Johns Hopkins大学Bloomberg公衆衛生学部のBethany B. Barone氏らが、JAMA誌2008年12月17日号に報告したところによれば、癌発症前に糖尿病があった患者となかった患者の全死因死亡を比較する系統的レビューとメタ分析を行い、糖尿病があるグループの死亡リスクは有意に高いことを明らかにした。
著者らは、2008年5月15日までにMEDLINEとEMBASEに登録された文献と、それらが引用していた文献の中から、1型糖尿病と2型糖尿病の患者を対象とし、癌発症後の死亡について評価し、最低3カ月の追跡を行っていた英語の論文を検索し、ヒットした計7858件の中から、全死因死亡率または全生存率を報告していた48件の研究を系統的レビューの対象に選んだ。
糖尿病の存在が生存に有意な利益を及ぼすと報告していた研究は1件もななく、有意水準や影響の大きさを問わないとすれば、糖尿病と死亡リスク上昇の関係を示していた研究は32件、糖尿病と死亡リスク低下の関係を示していた研究は7件だった。次に、リスク推定(回帰モデルを用いて糖尿病とその後の死亡との関係を評価し、ハザード比または相対リスクなどを提示)と、推定の精度を示す95%信頼区間や標準偏差などが記載されている研究23件を対象に、メタ分析を実施した。次にサブグループ解析を行い、癌の部位(乳癌、大腸癌、子宮内膜癌、胃癌、肝細胞癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌)ごとに、診断時の糖尿病の有無と長期的な全死因死亡との関係を調べた結果、
死亡リスク上昇は、子宮内膜癌(ハザード比1.76、1.34-2.31)、乳癌(1.61、1.46-1.78)、大腸癌(1.32、1.24-1.41)で有意だった。
以下の癌については、有意ではないがリスク上昇傾向が見られた。
前立腺癌(1.51、0.94-2.43)、胃癌(1.36、0.92-2.01)、肝細胞癌(1.30、0.99-1.70)、肺癌(1.15、0.99-1.34)。糖尿病患者が癌と診断されると、長期的な全死因死亡のリスクが上昇することは明らかになったが、なぜ糖尿病があると死亡リスクが高まるのかについては不明だ。
原題: 「Long-term All-Cause Mortality in Cancer Patients With Preexisting Diabetes Mellitus」
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